さて、楽勝ヒマラヤトレッキングをめざしていたお気楽ないさむちゃんは、
よりによって卒業式の日に、現在で言えば就活担当教官の教授に日楽行きを
宣告されてしまった。
話せば長いことながら、なぜこんな災難が降って湧いてきたのかをお話せず
ばなりますまい。
実は同じ学年ですでにある企業(信州精機・現在のE?S?N)に就職が決まってい
たS.O.君がどうしても日本楽器に行きたくなって、一般募集に勝手に応募し
てしまったんだ。
当時の国立大学の工学部の就職は、決めるものではなく『決まる』ものだと
いわれていた。
これはあくまでも普通の、ごく普通の一般的な学生の話なんだが、就職先と
いうのはそれはもちろん希望もあるのだけれども、成績やその他の要因によ
って、就職担当教官と所属講座の担当教官が相談して、だいたい手持ちの就
職先に学生を割り当てるんです。
学生のほうもそれが当たり前で楽なもんだから、よっぽど希望の就職先があ
る場合を除いて先生様に逆らうなんぞということはしませんです。ハイッ!
そういうことで、S.O.君はその護送船団方式によって獲得した既得権をかなぐ
り捨てるという暴挙に出たのであります。
ご想像の通り、就職担当教官は烈火のごとくお怒りになられましたとさ。あた
りまえですよね、団の面目まるつぶれですもんね。クエッ、クエッ、クエッ!
彼を日本楽器に行かせるわけニャーいかネーぞっちゅうんで、しかし困ったこ
とにその就活センセーと楽器の重役さん(この人はカリスマ社長の娘婿さん)が
東京帝国大学の造兵工学科で同期だってんだから、もうしょうがない。
誰かみつくろって送り込むしかない!うーん、だれかいねーだろーか?!
誰が考えたって、どこをどう探したって、俺=いさむちゃん以外いっこねー!
てんで、俺とS.O.君は二人で日本楽器の就職試験を受けるっつうことになったわ
けで・・・